2012年10月19日金曜日

軸を作る 谷に落とす その2


3回に分けて書くつもりの内の2回目


1.平面で考えてみる
2.斜面で考えてみる
3.斜面を滑ることを考えてみる



■雑談
一応大学でも力学を勉強しました。その結果、自分に優秀さのかけらも感じませんでしたし、細かいことも忘れましたが、力学をどう使うモノかというのぐらいは分ったつもりです。

どう分ったかというと
「スキーをうまくなるために力学でスキーを解説する」
ってことにあまり価値はないってことです。

スキーを作ったりブーツを作ったりするのには工学的アプローチは必須でしょうが、スポーツを教える手段としては非常に効率が悪いのです。なぜなら力学はスキーヤーの共通言語ではないからです。
なので力学な感じを追求しようとは思っていません。雰囲気で読んでください。
でも、力学有識者の誤解を防ぐために用語の間違いは直したいのでそういう指摘はうれしいかも。


■本題

2.斜面で考えてみる


さきほどは日常生活に近い「平面で考えてみる」としてみたわけですが、今度はスキーらしく「斜面で考えてみる」に話を進めます。

気持ちよく傾いて軸が入れ替わるイメージが高まったので、斜面を滑っていても円錐というか振り子のイメージで降りてきたいです。ところが、緩斜面では気持ちよくターンできたのに、斜度がきつくなればなるほどうまく傾けなくて、ターンが浅くなってしまい、暴走してしまいます。

さてどうしてなんだろう?と、何が違うのかを考えてみます。




では、図も斜面らしく傾けてみます。


(図は、平面の図を傾けただけです。)

斜面にすると、斜面を落ちようとする力が働きます。


その結果、ターン中にも平面では存在しない問題が起こります。

ターン前半(谷回り)では身体もスキーも斜面を落ちる方向に移動しているので、重力をたいして感じませんが、
ターン後半(山回り)では身体は斜面を落ちる方向に移動していますが、スキーは落下に逆らって切り上がろうとするのでかなりの重力を感じます。
遠心力というほうがしっくりくるのか。とにかく斜面を落下する方向への慣性に逆らうわけです。

#短い力学屋人生(あったのか?)から遠ざかって長いので用語はKNJさんとか物理の先生がいたのでコメント待ちます


(青い矢印が落下に逆らう力=ターンするための力)


つまり、平面と違い、ターン前半とターン後半では力のかかり方が違います。
ターン後半では、平面では受けることがないような大きな力が容易にかかるので、足が縮こまっている(=膝が必要以上に曲がっている)とターン後半でつぶされてしまいます。
スキーヤー自身にすれば実際にはつぶれてないつもりで必死で筋力でがんばるので、疲れやすい滑りになってしまいます。
(追記)
また、もう一つありがちなパターンとしては、平面と同じようにターンの前半とターンの後半で同じ力でターンしていると、落ちる力に逆らっている分、青い矢印の向きの力が足りないと、ターン後半ではターン弧が膨らんでラインが落とされます。その結果、ターン弧が縦長になり暴走へとつながったり、暴走をおそれて無理にずらしにいき、疲れやすい滑りになったりします。
(/追記)


青い矢印で効率よく強い力を引き出すには、筋力ではなく骨格で支える必要があるって話につながります。


さらにもっと大きな問題は、切り替えです。
子供の頃からスキーをしていて(地ガキってやつですね)斜面という非日常が、日常になっている人達を除き、私たちは平面での生活に慣らされているわけです。
そんな私たちは、無意識に平面で空間をとらえて身体を動かしてしまうようで、平面と同じ感覚で次の円錐に乗り換えようとすると、本来移動すべき目的地より上に移動しようとしてしまいます。

(無意識の平面上(半透明青の面)に移動しようとしてしまう。
本当は斜面上(黄色の面)に移動する必要がある。)


でも、雪面はそんなところにないのでどうなるかというと、腰の位置は無意識の平面と同じぐらいの高さに移動してしまいます。その結果、足をまっすぐ降ろさないと雪面に届きません。となると、腰が高過ぎるので思ったように傾くことができず、ターンも浅くなってスピードもコントロールできなくなるという事象が発生してしまうとなります。

スキーヤーの実際としては「怖い」となって滑れないか、浅いターン弧で暴走するということになります。

後傾の問題も同じで、「後傾になっているよ」って言われたら、あらん限りの力を使って必死に「前に前に」と誰もが思うわけです。でも、身体を動かす速さには限界がありますし、そもそも前と思って移動しようとしている目的地が間違っているので治るわけがないのです。
斜面を滑るスポーツであるスキーには、平面での生活をベースにしてイメージした運動では解決できない問題があり、私たちは斜面を意識した立体的なイメージを固めないとスキーがうまくなれないということになるんだと、私は改めて思い至ったわけであります。


3.斜面を滑ることを考えてみる

に続く。




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