2013年3月12日火曜日

スキーブーツR&Dで作ったブーツの特徴 FAQ その1


R&Dでブーツを作っています、という話をした後によく聞かれる質問と答え。
よく聞かれる順で書いているつもりですが、数えてないので何となくです。
それと、あくまで私の回答であって、山本さんの回答ではないことにご注意ください。
そんなに外れては無いとは思いますけど、回答内容のすりあわせまではしたことがありません。

誤解の無いようにと思って書いてたら、分量が増えてしまいました。
めげずに読んでくれるとうれしいです。
もう少し続きます。


Q1. R&Dで作ったブーツの寿命は?
A1. おいしいのは2年。4年ぐらいはいける。
ブーツの寿命は何が決めるのか、というのを「素材の寿命」「経済的な理由」「本人の体型」というところで書いてみたいと思います。
いずれにせよ、「おいしいのは2年。4年ぐらいはいける。」というのは変わらないと思います。

まず、素材の寿命。
ブーツの素材はプラスチックなので確実に経年劣化します。これを踏まえてブーツの寿命は5年程度を目安にするのが最近の考え方だと思います。でも、これは壊れないで履ける範囲の目安で、素材のねばりとばねが活きてて本当においしい部分は最初の2年ぐらいじゃないか、というのがよく言われることで、私もそのような感覚です。
冬に40日+SSAWSで毎月2回ぐらい滑っていたころの記録をあさると、2年目までは特に不満はありませんでしたが、3年目の冬の途中ぐらいから、「これはもしかして...」と当時の私は思っていたようです。

次に経済的な理由。
これは何年おきにブーツを作るお金を用意できるのかってことで、これは人それぞれでしょう。私には、2年ごとにブーツをつくるというのは経済的な理由で難しいので、4年は履きたいと思っています。

本気な選手だったらもちろん毎年作り替えるでしょうし、ブーツの経年劣化に敏感な方や、滑走量が多い人なんかでも結論は違うと思います。私自身の3シーズンめいっぱい滑った1足目と8シーズン同じブーツを履いた2足目の経験からいうと、3シーズン目からそろそろ次が欲しいなぁと感じる場面はありましたが、4シーズンぐらいは実用に耐えた気がします。

その点からも、私自身という限られたサンプルではありますが、特段、R&Dのブーツの寿命が短いとは思えません。

最後は本人の体型からくる問題。
いくら足に合うように調整してもらっても、本人の体型(足型)が変わってしまえば合わなくなります。ブーツをタイトに作っていればいるほど、自分の足が変わったときには合わなくなります。
足型なんてめったに変わらないと思いきや、意外と簡単に変わってしまいます。たとえば、すごいトレーニングして筋肉の付き方が変わってしまうとか、運動不足で土踏まずのアーチが崩れてきたとか。特に後者なんて、誰にでも起こりえます。アーチが崩れれば、インソールのカーブが合わなくなるだけでなく、足の長さも長くなりますし、これにともない当たる場所もずれてしまいます。
これも人それぞれですが、私の場合、今までは4年ぐらいはどうにかなっているように思えました。



Q2. 加工のしすぎでシェルがへたるのが早いって聞いたけど?
A2. 加工の問題ではないみたいです
8年使ってくたくたになったブーツをみても、加工部分が弱くなった様子はなかった(へたりを感じるのは別の場所だった)ので、加工のしすぎで、ってことではないと思います。

それでも、R&Dのブーツを長年(2足目は8シーズンも使ってしまいました)使い続けると、たしかに最初の頃よりへたった感じはします。
これは、過去、私が履いてきたブーツよりもずっとシェルがたわんで戻るという動きをたくさんしているためだと思います。

R&Dのブーツは、ブーツの機能が発揮されるようにシェルがたわむことが織り込まれて設計されています。これにくわえて、スキーとしての運動をしっかり出来る様に作られています。
このため、私が従来履いてきてブーツと比べて、よりいっそう足を動かして、ブーツに負荷(正しい負荷ですが)がかかる滑りをしてしまうので、経年劣化が進むのだと思います。

バネも使わないで保管しておけば長持ちしますが、使って伸びたり縮んだりすれば消耗します。シェルも同じです。たとえ寿命が延びても、ブーツとしての機能が働かないとか、足を動かさない滑りをするとかは本末転倒な気がしますので、こればっかりは仕方が無い気がします。

<脱線>
外から見て安定して動いていないように見えるからといって、実際にスキーヤーが動いていないと言うことは無く、どちらかというと一生懸命動いていないと上半身や頭が止まっているようには見えません。スポーツなので、一生懸命身体を動かすのがいいと思っているので、R&Dで山本さんが動けるブーツを作る、というのは私は考えかとしても一致していて満足しています。
</脱線>



私の場合は今のブーツも含めて過去3足とも、よく踏める右足が先にへたり始めてきます。左右差が大きくなると違和感が大きいので、この時も作り直したくなります。
これらを踏まえて、A1.のとおり、おいしいのは2年、実用は4年という感じです。



Q3. シェル出しに泡がでてるようだけど、一般スキーヤー向けの作業は雑なの?
A3. あれは手抜きではなくて、わざわざ一手間加えているんだそうです
シェルを熱で変形させても、ほっとくと元に戻ってしまいます。せっかくシェルのカーブを変えるほどのチューンをしても戻ってしまってはなんにもなりません。
R&Dでは、シェルのカーブがもどらないようにするため、わざと高温であぶってシェルの表面に硬い膜を作っているのだそうです。
おかげさまで、私が作った三足のブーツでは、使っていてシェル出しが戻ったということは一度もありません。
最近は見た目にこだわる人が多いので、さらに気を遣ってきれいに仕上げているみたいです。


Q4. ブーツ全面をいじりまくるんでしょう?
A4. そんなにあちこちはいじらないと思いますよ
シェルの内側のほぼ全面がザラザラになっています。
でも、これはインナーとシェルが滑らないように加工しているだけで、形を変えた場所、という訳ではありません。
むやみやたらにいじっているわけではないようです。

Q5. 結局、足の形の悪い人のためのチューンなの?
A5. たぶんそう。
労せずして履きたいブーツに足が入り、スキーを楽しく出来るのであれば、R&Dに行く必要はないです。実際に私が見た範囲でも、本当にそういう人っているんですよね。足と滑りを見せてもらいましたが、別に大きいブーツでごまかしているわけでも無いし、滑りのレベルが低いわけでも無いのに。本当にうらやましいかぎりです。

一方、ブーツを工業製品として考えた場合、ブーツの足型にぴったりの人なんてのはなかなかいないし、普段の生活習慣や過去のスポーツ経験などで足の形が変形している人も少なくないので、足が思ったように入らない人というのはある一定数いるんだと思います。また、足型優先じゃ無いブーツの選び方をしたいとなった場合は、R&Dに相談するのも手だと思います。


Q6. 結局どこのお店がいいの?
A6. 残念ながらいい「お店」はありません
これは「ロクな店がねぇな!」と言っているのではなく、チューンをしてくれる「人」を探す必要があるという意味です。
失礼な物言いかもしれませんが、
ブーツチューンというサービス自体がまだまだ属人的で、システムとしては成熟していないと思います。
なので、
「あの有名量販店に行けば誰がやっても安心」、
「○○システムを使えばブーツチューンはばっちりだね」
というようなことはまず無いです。

ということで、評判のいいブーツチューンを聞いたら、そのチューナーの名前も押さえて、その人を捕まえるといいと思います。


Q7. ○○ってブーツチューンも有名だけどR&Dとどっちがいいの?
A7. 人それぞれです
ネットで探してもいわゆる有名ブーツチューナーが何人も出てくるわけですが、少なくともこのレベルの人たちにお願いするのであれば、そこそこの結果はでると思います。
なんせ、この人たちの客層は、自分の足とブーツに口やかましくて、普通よりスキーが上手いスキーヤーばかりなので、鍛えられ方が違います。
このレベルの人たちだともうチューナーの優劣ではなく、自分の考え方とあうのか、コミュニケーションがうまくとれるのか、という点の方が重要だと思います。ここがあえば、チューナーの実力が発揮されて満足行く結果になるんだと思います。


半分ぐらい書きました。続きます。

7 件のコメント:

KNJ さんのコメント...

>運動不足で土踏まずのアーチが崩れてきたとか。

これは、俺の事か?という話で…
実際には、運動不足+加齢によりという、更に情けない理由だったりしますが。

SG誌の山本さんのコラムに、春スキーまで使った靴の方が長持ちする(割れにくい)という様な話が出ていました。
理由についてはわからないと書かれていました。

私の推測では、一つの亀裂がそのまま成長するのではなく、春まで使い続けることによって細かい亀裂に分散されて、深い亀裂にならずに済むのかもしれません。

でも、弾力は落ちそう。

kz さんのコメント...

土踏まずのアーチは私も言われています。アムフィットの計測後に言われました。
ソール長でみたら、298mmから304mmにあがってますから。ヨーロッパサイズからcm単位に変わったので微妙な違いですが。
昔のインソールは土踏まずが高くてびっくりです。

s_takky さんのコメント...

私も初代ドーベルマンからアグレッサーに移行する際、同じ295mmはもうギリギリだよと忠告を受けましたね
ついでに足指をグーパーさせる運動でこれ以上土踏まずの崩れを抑えるように指導も受けました
最初のうちはやってたんですけどねぇ、ここ2年ほどサボり気味です。
いまのところコブに入ってもつま先が当たるような事態は全く無いので、製作の時点で崩れるとこまで崩れちゃってたのかな(w

kz さんのコメント...

s_takkyさん

みな同じような話を持っていますね。
ちなみに、直前に使っていた295mmのアグレッサーUK6から304mmのATOMICに移行しましたが、サイズアップの違いはわかりますが、それで困るかというとそうでもありませんでした。
「R&Dで作ったブーツの特徴 その7 」のコメントに書いてありますが、友人のKNJさんの体験談を見ても、次回は無理せずサイズアップした方がいいのでは?

KNJ さんのコメント...

インソールといえば、R&Dで作るアムフィットは、シダスとかBMZとかに比べると、ほとんど真っ平って感じですよね。でも、疲れている時に履くと、その真っ平らなインソールでも土踏まずが高く感じることがあります。

支えてほしいけど、支え過ぎてもいけないという、微妙なところ。

kz さんのコメント...

春スキーまで使う方が長持ちするのは、春までスキーするようなスキー好きの人の方が道具を大事に使う人が多いから、かもしれませんね。

kz さんのコメント...

KNJさん

たわむシダスやBMZと違って、素材の弾力しかないアムフィットは若干控えめにカーブを作るのかもしれませんね。
ただ、私が思うに製品の差異というよりもやっぱり作る人の考え方の違いでカーブが変わってくる気がします。シダスでやってもつま先の上げ加減で緩いカーブにはなるでしょうし。

インソールのカーブをきつめにすれば、変わったことが体感しやすいですが、その分滑りへの影響も大きくなりますよね。それがいいのか悪いのか。考え方次第なのでしょうね。


どちらにせよ、インソールですら、どの製品、どのシステムなら安心というほど成熟しておらず、作成者の考え方次第になってしまうのが現状だと思います。